普通の人の投資と読書@シンガポール

普通の人(@シンガポール)が投資と読書を気ままに綴る

シンガポール株はコロナ後になぜ上昇が遅れているか?

いきなり緩和休題で「なぜコロナ後にSTIの上昇が遅れているか?」について考えます。

STI(シンガポール株式指数)の現状 

シンガポール株を見るには当然STIがどうなっているかが重要です。19年8月末から20年8月末までの1年間の株式指数の値動きです。

f:id:primereadingbook:20200831211848p:plain

STIと主要株式指数の比較

 この1年間で株式指数はこんな感じです。

 NIKKEI 225(青線)   +1.2%

 S&P500(緑線)   +20.9%

 香港ハンセン(黄線) ▲8.8%

 STI(赤線)     ▲20.9%

 

シンプルにいえば、日経は3月のコロナショックから8月末までの5か月間で立ち直ってプラマイゼロぐらいの状況。S&P500はコロナショックから更に反発して最高値を更新中。香港ハンセンはコロナ+デモ+中国との政治関係でダメージを受けながらも回復中。そして、シンガポールSTIはコロナショック後から回復できずに低空飛行を続けているのが現状。

 

なぜSTIの回復が遅れているのか?

まず第1にコロナによる貿易業・輸送業の不振です。シンガポールは貿易立国で、中国とアメリカ、アジアとヨーロッパのヒトとモノつなぐハブの役割を果たしています。なので、米中の貿易摩擦で米中間の貿易減が直接影響します。また、コロナで航空便や海運が止まるともろに影響を受けます。特に、シンガポール航空は国内線を持っておらずすべて国際線に頼っているので、国境封鎖の影響を大きく受けています。これが第1の理由です。

 

次に考えられる理由が観光業です。観光はシンガポールにとって重要な産業です。マリーナベイ、ナイトサファリ、USS(ユニバーサルスタジオシンガポール)やカジノといったエンターテイメントをそろえています。4月からサーキットブレーカーというロックダウンを4カ月以上の長期にわたり実施しており、旅行目的での入国は不可です。おそらく今年の年末まではこの状態が続くとみられています。中国をはじめとする世界各国からの観光客が途絶えており、且、中期的にも回復の見込みが立たちにくい状態です。これらの観光業の運営会社セントーサリゾート(ゲンティン)や関連するタクシー等を運営するCOMFORTDELGRO などの会社が苦境に立たされています。

 

そして、第3の理由が製造業と建設業です。シンガポールは優位な立地と税免除といったメリットから石油プラントや組み立て工場が西岸の地域には多くあります。また、限られる国土の最大利用と過去の不動産価格上昇もあり、あらゆるところで新規の商業ビルとコンドミニアムの建設が行われています。そういった工場、プラントや工事現場では外国人労働者が働いています。シンガポールのコロナ感染者の8割以上はドミトリーに住む外国人労働者です。シンガポールSTEやSEMBCORPといった製造業やエネルギー関連の会社、さらには建設・不動産業は外国人労働者の間でのコロナの拡大で事業を一時的にストップか制限せざるを得ませんでした。外国人労働者の検査も終わり、9月以降徐々に建設現場の活動は回復しています。ただし、今後、コロナ対策をするために、従来のように安いコストで外国人労働者を雇い続けられない見込みです。こういった追加のコストが製造業や建設業に中長期的での負担となり、関連企業の株価の重しとなっています。

 

最後に、金融業です。健全な財務体制により信用不安といった危機はなく、直接のコロナの影響は限定的です。一方で上記であげた3つの理由からシンガポール経済が苦境で、さらにはコロナの打撃を受けた東南アジア経済がスローであることに引きずられて銀行を筆頭に株価が伸びていないのが現状です。

 

なぜ他の指数よりも上昇率が少ないか 

そして、ハイテク関連や巣ごもり銘柄といった成長株が少ないことも、回復が他国の指数と比べて遅れている理由です。アメリカのハイテク関連の株式が最高値を更新しているのに対して、STIには基本的にはハイテク銘柄がありません。また、日本のように国内需要むけの巣ごもり銘柄もほとんどありません。そもそも、国内の消費需要が限られているので伸びも限定的になります。

 

つまり、構造的にコロナの影響を受けやすい貿易、観光、製造、建設が苦境であり、且、他の国でマイナスを相殺するように伸びているハイテクや内需向けの株がないため、回復が遅れているのが、シンガポール株式指数が上昇していない原因です。

 

今後はどうなるか? 

今は苦しいシンガポール株ですが、1年後、2年後にどうなっているか?

 

ワクチンができて、コロナの影響が和らいでくれば、貿易や人の移動が戻るにつれて経済と株価が回復し来ることは間違いありません。一方で、今の大方の予測では、以前のような人・モノの動きに戻るには3年・5年といったかなりの時間を要すると考えられています。なので、回復には時間がかかると思います。

 

コロナによって経済や業界の構造的な変化が起きて元のようには戻らないということがよく言われています。シンガポールも例外なくその影響を受けると思います。但、意外と構造は変わらないのではないかというのが、私見です。人の旅行したいという願望はなくなることなく、時間はかかるものの、航空業や観光業もまた栄えると思っています。また、不動産や製造業もシンガポールの立地・経済・通貨・法秩序の安定性から引き続き残り続けると思っています。

 

なので、いま出遅れているSTIも中長期では「今が買い」ではと思っています。5年我慢する覚悟があれば、日経やS&Pよりも出遅れているSTIが報われるのではないかとみています。

 

*上記はすべて私見であり、自身の考えとリスクで投資してください!