普通の人の投資と読書@シンガポール

普通の人(@シンガポール)が投資と読書を気ままに綴る

読書 35歳の教科書

和田中学校の校長を務めた藤原和博さんの人生戦略を書いた一冊です。35歳で区切っているのですが、何歳で読んでもためになる本だと思います。久々に読書感想文を徒然なるままに書き進んでいきたいと思います。

 

まず初めに、結論というか、この本の言いたいことは、すごくシンプルで「みんなが豊かになれる日本の成長社会は終わったよ、これからは個の力で生きていってください」です。

 

藤原さんの他の著書も複数読んでいますが、主張は基本的に一貫していて(逆に言うと、どの本でも同じことを言っていて)、下記の対比やキーワードから「多様で変化が早いこれからの時代において、自分の頭で考えて、ネットワークを築いて、ひとりひとり独立して豊かな人生を歩んでください」と訴えています。

  • 「成長社会→成熟社会」
  • 「みんな→ひとりひとり」
  • 「正解→納得解」
  • 「モノ(物質)→ココロ(精神)の豊かさ」
  • 「安定/固定→多様化/変化」
  • 「会社→個人」
  • 「キラカードになれ!(自分だけのレアで価値のある強みを持て)」
  • 「各1万時間費やして習得する3つの軸(強み)を持ち1億人に一人になれ!」
  • 「頑張れば報われる」教の時代は終わった
  • 「クリティカルシンキング・プレゼン力」
  • 「聞く力・共感力」

このキーワードや概念をわかりやすく伝えるために、ご自身のリクルート時代、校長時代、そして今のフリーの経験をうまく交えながら、毎度、主張を展開しています。

 

しがない35歳サラリーマン代表(いや、私は35歳ではないですが、、、笑)としては、この教科書や藤原さんの著書全般の主張はスッと心に入ってきましたが、「そうは言ってもやはり…」なんて感想を交えながら、各論に行きます。

 

1.35歳で迷え!?

10代は集中力を磨き、20代1000本ノックで無我夢中に鍛えて、30代で五里霧中だ!と本書は指摘しています。

かの孔子も「子曰(のたま)わく、吾十有五(じゅうゆうご)にして学に志し、三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして天命を知る、六十にして耳従(したが)う、七十にして心の欲する所に従いて矩(のり)を踰(こ)えず。」とのたまわっています。まぁ、30歳になると何となく学問(今でいうと世の中や会社のこと)が分かってきてちょっと立ちあがれる、と。

要は、何となく見えてくる30歳から更に5年過ぎた35歳になると、本当にこのままでいいのか、転職したほうがいいのか、独立したほうがいいのか、この仕事は本当に自分のやりたいことだったのかと、いろいろと迷っちゃう状態になるのだと思います。

明日の昼ごはんは唐揚げ定食か、サバミソ定食か、いや、アジフライ定食かと年中迷っている中年サラリーマンには心にしみるセリフです。

 

脱線しましたが、藤原さんはこの迷うというのは、「今後どのみちで生きていくか」ちゃんと迷って考える時期が35歳だと言っています。そして、迷ってどうするか?「自分自身と向き合って見つめる」そして「会社以外に打ち込めることをみつける」ことが大切だと藤原氏は主張します。で、「その打ち込めること」と「自分の持っている技術」を掛け合わせてオリジナリティーあるキラカードになって将来稼ぎましょう!と。

要は不安定な社畜一本足打法から、趣味でも副業でもとにかく、好きなことでもう一本柱を作りどっしり二本足打法にシフトを考えることで将来、生きていける打率を高めようと!のたまわっています。孔子ばりに。

 

2.武器と仲間を持て

「武器と仲間を持て」とは、なんと革命のカリスマ、チェゲバラの一文ではなく、本書の一文です。この本でいう武器は、銃でも剣でもなくて、価値が認められる、お金がもらえるスキルのことを指しています。医者、弁護士やコンサルタントなどの一流の専門職の人(要は武器持っている人)は時給換算すると3万円から8万円程度になるそうです。そして、普通のサラリーマンの時給は1万円以下にとどまります。だから、「普通」の武器を持っていないサラリーマンにとどまらず、オリジナリティーある武器を持った人になりなさい!と藤原さんは力強く言います。(藤原さんの言うクリティカルシンキングであえて言うのであれば、お金があれば幸せなんですか、時給が高ければそれでいいんですか!と反論もできますが、まぁ、効率よくお金を稼げるに越したことは御座いません)

残念ながら世のしがないサラリーマンはあまり武器を持っていないです。新橋のサラリーマンに「あなたの武器は何ですか?」ときいたら、あえて言えば、「根性っす!」「忍耐力ですかね」「お酒が強い‼」といったたぐいの回答がおそらく10人に7人以上は返ってくると思います。うーんお金になるかなぁ?オリジナリティーあるかなー?、、、まぁ恐らく、いや間違いなく、あまりお金になりません。

偉そうなことを言いましたが、私自身も何が武器か?と聞かれると。。。うーんと唸ってしまいます。営業、マーケティング、英語、マネージャー業、コーチングなんてまだまだ竹やり位の強度の武器しか御座いません!

 

この本を読み進めていくと、「やったもん勝ち!、打ったもん勝ち!、手数出した方が勝ち!」と檄が藤原氏から飛んできます。そう言われれば、もうすべて合わせて「英語もコーチングもできるセールルマーケのマネージャー」が武器だと信じて、戦場で戦うしかなさそうです。

好きなこととか、今までやってきた竹やりの武器から戦いを始めて武器を強くするしか道はなさそうです。

 

3.自分自身をリストラする(やらないことを決める)

武器を磨くには時間と集中力が必要です。しかし、人類には1日24時間という限られた時間しか与えられていません。なので、今までの生活で惰性でやっていることをリストラする必要が出てきます。テレビ、飲み会、ゴルフやポジティブシンキングも捨ててしまえ!と本書は言っています。

サラリーマンから、酒、テレビ(プロ野球中継的な惰性)とよく分からい自信(ポジティブシンキング)を取ったら何が残るのか、と反論したくもなります。何も残らないというのが、現実です。でも、何も残らないから武器もないという事になります。。。はい。

で、余計なモノを捨てたら、「全身全霊」を打ち込めることに100(件、軒、社)を基準に1万時間は取り組め!と。プロになるには1万時間という千本ノックが必要で、そのノックを受け続けられるのは、好きなことだけだと。

 

そして、そうやって磨いた武器は、その人を組織人から「組織内個人」へと進化することが出来る。組織内個人とは、組織に属しているけれども、明確に個人としての個の強さや武器をもって、勝負している自覚をもった人です。会社の中で自営業しているぐらいの気概を持って働くことが必要と。

サラリーマンには、傷口にレモンなみにしみる部分です。自分の専門性や独立したビジネスを持てないから、「みんなと同じ」で何となくサラリーマンになった大半の人々に心のリストラ宣告をしています。そういう時代じゃなくなったのだよ、サラリーマンも組織にいながらも個人で戦わないと生きていけない時代が来ているのだと、今までため込んだ心の甘えという贅肉をリストラしなさいと、厳しい現実を突きつけています。

会社の中で、自分のやりたい事と会社の方向性を、合わせて活動することが、組織内個人として成功する秘訣で、それが「寄業人」と主張します。組織のビジョンや戦略を理解し、それにマッチして自分がやりたいことを模索することが、押すべきツボとなります。そして、自分のやりたいことが、1)わかりやすく目に見える(可視性)、2)個人としてやってみたい(共感性)、3)すぐに体を動かせる具体的なアクション(運動性)だと、よいとアドバイスしています。

仕事が与えられるモノでなく、自ら生み出し、奪い取りに行くモノだと、実感させられます。「私はこれがやりたい!」と叫んでも、残念ながら会社の利益にならなかったり、方向性と違っていれば、会議の場で「ふん」と一蹴されて終了です。上の3つの条件は秀逸です。これはこの話だけでなく、成功するプロジェクト全般に言えることだと思います。成功するプロジェクトや事業案件は、大抵この3つの条件をそろえています。

 

4.仲間をふやせ、ネットワークで生き延びろ

最後が仲間/ネットワークのお話です。親族の集まりでなく、会社の飲み会でなく、地域のコミュニティとか第三の場所で仲間を集えと言っています。そんな第三の場所では、年次とか、権力とかでは人が動かないので、相手の話をきいて何がツボかをじっくり理解して「動機付け」することや、「戦略的に」重要な人/ものに時間を投入することが大切だ。人と人とのかかわり、人自体がレバレッジとなり、効果を発揮するからこそ、仲間が今後の世の中で重要になってくると訴えて本書はおわります。

これは、もしや「スタバのサードプレスか」、と思った一文でした。(家族)なれ合いとか、(会社)利害でない、(スタバ)まっさらの関係で、自分を見つめる、鍛える、コーヒーを楽しむ場を設けましょうと。いや、スタバではないか(汗。35歳のサラリーマンがほかの人に何かやってもらうときには、大抵は「お願い・依頼」のスタイルです。お願いは、「やってくれたらうれしいな」、或いは「偉い人が依頼しているからやってね」というものです。これが通じない中で、人を動機づけるってなかなか難しい。もう、お酒奢るぐらいしか思い浮かばないのが、、、笑

 

ということで、ひとまず、35歳の教科書の解説(でなく、サラリーマン愚痴)を終えます。このブログをお読みになった方は、もう内容をご存じなので買う事を全くお勧めしませんが(笑)、どうぞ↓

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シンガポールの銀行株 ③比較

 前回はシンガポールの三大銀行の株価、パフォーマンスやその評価に関して総括しました。で、その結論として今はDBSが良さそうだが、①そもそもシンガポールの金融業・銀行業がどうなるのか、②なぜDBSが過去負けていたのか(18年以降良くなったか)を考える必要がありそうとなりました。

 

またまた大分、サボっておりましたが、この2つのうち①テーマ(そもそもシンガポールの金融業・銀行業がどうなるのか)を今回は扱います。

 

シンガポールの金融業

先に断っておきます。私は金融業界で働いていません。いや、働いたことすらありません。従って、ほぼシンガポールの金融界に対してずぶの素人というレベルですが、知っていること、(投資の為に)学んだことを徒然に書きたいと思います。

 

シンガポールの金融界。。。響きはいいのですが、実態はよくわからない。そんなイメージを持ちと思います。私も持っています。分かることから行きます。

 

1.規制が比較的緩やか;様々な金融商品が組成・販売可能

2.税金が安い;企業・投資家が集まりやすい

3.周辺東南アジア国々・中国の企業の資金調達の場 

4.立地が良い;アジアのリージョナルHQ

5.世界の名だたる銀行が集まっている

6.商品取引市場(SGX)が充実;先物を含めて豊富に取り揃え

7.通貨が安定している;MAS(Manetary Authority of Singapore)がコントロール

8.インフラ・法規制が安定している;政府(MAS等)ががっちり担保

 

この結果、金融市場としてニューヨーク、ロンドン、香港に次ぐ第4位の地位をシンガポールは確立しています。そして、(おそらく)シンガポールの野望はアジアNo.1金融センターになること。似たような地位・地理にある香港(と上海)に中長期で勝つことが一つの目標であると思います。

では、シンガポールの金融・銀行業界どうなるか? 

コロナによって人・モノの流れが分断されましたので、シンガポールの持つAPACの「ヘソ」という立地の良さは優位性が少し薄れてきていると思います。ただし、カネの流れという意味では、上記であげたインフラ・法規制・通貨の安定性やメリットが今後も存分に発揮されて、アジアの金融センターとしての地位は揺るがないと思います。

 

また、中国という後背地をもつ香港と上海もそう簡単には崩れないと思いますが、常に中国の政治動向や米国の圧力に脅かされるリスクを持っています。その意味では中国共産党の政治色がないシンガポールは中国企業にとっても有難い資金調達の場であり続けると予測しています。

 

更に、シンガポールの金融の発展は周辺の東南アジア諸国に大きく左右されます。インド、インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナム、ミャンマーとこれらの国と企業が発展し、海外市場に出ていく際に(自国の金融市場が必ずしも発展していないので)シンガポールで資金調達をします。アジア企業にとってシンガポールは橋頭堡です。一般的にこれらのアジア諸国が今後30年は経済成長していことは間違いないのでこの点もシンガポールにはプラスです。

 

そして、最後にデジタル化がカギを握ります。Fintechに代表される新興Tech企業による金融業進出が今後も加速していくと予想されています。その意味では、シンガポールは政府が音頭を取り、Tech企業に金融業ラインセンスを与える新たな取り組みを先んじて開始しています。Fintechにおいても政府がある程度の基盤・インフラを整えて「ルールが守られるうえでの自由な競争・発展」を他国より先に促しているのです。これらの取り組みは伝統的な金融業が根強い欧州よりも先行しているように思います。

 

まとめると 

1.既存の安定した金融インフラ・市場は安泰

2.中国含むアジア諸国の資金調達の場としてもまだ栄える

3.Fintechといった新興勢力も取り込むべく先手を打っている

ということで、これからもシンガポールの金融市場は安定して発展していくと思います。

 

ただ、金融の中でも銀行業に絞るとどうなるか。。という視点はあります。伝統的な一般の預金者からお金を集めて、企業に貸して利ザヤで儲けるというビジネスモデルは恐らく少しずつ衰退していくと思います。また、シンガポールの銀行は不動産開発へ貸し出し・投資している割合も比較的高いと思います。なので、コロナでシンガポールの価値である立地が地盤地下していくと、銀行も少なからず影響を受けていきます。

 

DBS,OCBC,UOBと銀行+アルファでそれぞれ違った業態、方向性、強みを持っているという点が銀行間での将来の差になってくると思います。次回はこの銀行間の違いをもとにDBSの将来性を考えてみたいと思います。

 

シンガポールの銀行株 ②比較

大分、サボっておりました。すいません。

 

シンガポールのTop3銀行の株についての第2弾です。前回は基本の情報をまとめました。今回はそれぞれの銀行の比較をしていきたいと思います。

 

シンガポールの銀行の株価比較

まず、長期レンジでの株価比較です。青;DBS、緑;UOB、紫;OCBC、赤;STIです。

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15年間の株価比較

2005年から2020年の株価で言えることは、

1.3行とも市場平均(STI;シンガポール株式指数)を上回っている。

2.リーマン後(2008-2017)にDBSは市場平均を下回っていたが、

3.DBSは18年以降に急上昇。コロナ後も一番反発している。

4.UOBとOCBCは、一貫してほぼ同じ値動きで推移している。

 

もう少し直近だけに絞った過去5年のチャートは下記です。

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直近5年間

DBSがやはり直近ではパフォーマンスが優れているのが一目瞭然です。特に18年以降に市場平均を上回ってからは市況が好調時(20年1Qまで)も、不調時(20年2Q以降)もほぼ独り勝ち状態です。

 

なぜDBS のパフォーマンスがよいか? 

シンプルに言って下記3つの理由です。

1.規模が大きく、業績がよい(利益・利益率が高い)

2.デジタル化に成功しており、今後の成長も期待できる

3.配当も厚く、コロナの影響も比較的すくない

 

詳しくは下記3つの表をご覧ください

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直近の業績比較1

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比較表2

 

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比較表3

ではDBSを買えばよいのか? 

これがなかなか難しいです。DBSが体力があり、利益を出せる筋肉質で、将来的にもデジタル化の中で力ずよく生き残っていきそうに見えます。

 

ただ、過去の歴史を見ると、2018年以前のDBS株価が優れなかったように必ずしも盤石とはいいがたい側面があります。過去18年間の利益、売上の成長等の比較です。緑が3行で一番優れており、赤が一番劣っているのを示しています。

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業績比較

御覧の通り、長期レンジの過去のデータからはDBSが独り負け状態です。

 

ということで、DBSを買えばいいかということについては、①そもそもシンガポールの金融業・銀行業がどうなるのか、②なぜDBSが過去負けていたのか(18年以降良くなったか)の2つを深く考える必要があります→コレは次回のテーマです。

 

では!

シンガポール株はコロナ後になぜ上昇が遅れているか?

いきなり緩和休題で「なぜコロナ後にSTIの上昇が遅れているか?」について考えます。

STI(シンガポール株式指数)の現状 

シンガポール株を見るには当然STIがどうなっているかが重要です。19年8月末から20年8月末までの1年間の株式指数の値動きです。

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STIと主要株式指数の比較

 この1年間で株式指数はこんな感じです。

 NIKKEI 225(青線)   +1.2%

 S&P500(緑線)   +20.9%

 香港ハンセン(黄線) ▲8.8%

 STI(赤線)     ▲20.9%

 

シンプルにいえば、日経は3月のコロナショックから8月末までの5か月間で立ち直ってプラマイゼロぐらいの状況。S&P500はコロナショックから更に反発して最高値を更新中。香港ハンセンはコロナ+デモ+中国との政治関係でダメージを受けながらも回復中。そして、シンガポールSTIはコロナショック後から回復できずに低空飛行を続けているのが現状。

 

なぜSTIの回復が遅れているのか?

まず第1にコロナによる貿易業・輸送業の不振です。シンガポールは貿易立国で、中国とアメリカ、アジアとヨーロッパのヒトとモノつなぐハブの役割を果たしています。なので、米中の貿易摩擦で米中間の貿易減が直接影響します。また、コロナで航空便や海運が止まるともろに影響を受けます。特に、シンガポール航空は国内線を持っておらずすべて国際線に頼っているので、国境封鎖の影響を大きく受けています。これが第1の理由です。

 

次に考えられる理由が観光業です。観光はシンガポールにとって重要な産業です。マリーナベイ、ナイトサファリ、USS(ユニバーサルスタジオシンガポール)やカジノといったエンターテイメントをそろえています。4月からサーキットブレーカーというロックダウンを4カ月以上の長期にわたり実施しており、旅行目的での入国は不可です。おそらく今年の年末まではこの状態が続くとみられています。中国をはじめとする世界各国からの観光客が途絶えており、且、中期的にも回復の見込みが立たちにくい状態です。これらの観光業の運営会社セントーサリゾート(ゲンティン)や関連するタクシー等を運営するCOMFORTDELGRO などの会社が苦境に立たされています。

 

そして、第3の理由が製造業と建設業です。シンガポールは優位な立地と税免除といったメリットから石油プラントや組み立て工場が西岸の地域には多くあります。また、限られる国土の最大利用と過去の不動産価格上昇もあり、あらゆるところで新規の商業ビルとコンドミニアムの建設が行われています。そういった工場、プラントや工事現場では外国人労働者が働いています。シンガポールのコロナ感染者の8割以上はドミトリーに住む外国人労働者です。シンガポールSTEやSEMBCORPといった製造業やエネルギー関連の会社、さらには建設・不動産業は外国人労働者の間でのコロナの拡大で事業を一時的にストップか制限せざるを得ませんでした。外国人労働者の検査も終わり、9月以降徐々に建設現場の活動は回復しています。ただし、今後、コロナ対策をするために、従来のように安いコストで外国人労働者を雇い続けられない見込みです。こういった追加のコストが製造業や建設業に中長期的での負担となり、関連企業の株価の重しとなっています。

 

最後に、金融業です。健全な財務体制により信用不安といった危機はなく、直接のコロナの影響は限定的です。一方で上記であげた3つの理由からシンガポール経済が苦境で、さらにはコロナの打撃を受けた東南アジア経済がスローであることに引きずられて銀行を筆頭に株価が伸びていないのが現状です。

 

なぜ他の指数よりも上昇率が少ないか 

そして、ハイテク関連や巣ごもり銘柄といった成長株が少ないことも、回復が他国の指数と比べて遅れている理由です。アメリカのハイテク関連の株式が最高値を更新しているのに対して、STIには基本的にはハイテク銘柄がありません。また、日本のように国内需要むけの巣ごもり銘柄もほとんどありません。そもそも、国内の消費需要が限られているので伸びも限定的になります。

 

つまり、構造的にコロナの影響を受けやすい貿易、観光、製造、建設が苦境であり、且、他の国でマイナスを相殺するように伸びているハイテクや内需向けの株がないため、回復が遅れているのが、シンガポール株式指数が上昇していない原因です。

 

今後はどうなるか? 

今は苦しいシンガポール株ですが、1年後、2年後にどうなっているか?

 

ワクチンができて、コロナの影響が和らいでくれば、貿易や人の移動が戻るにつれて経済と株価が回復し来ることは間違いありません。一方で、今の大方の予測では、以前のような人・モノの動きに戻るには3年・5年といったかなりの時間を要すると考えられています。なので、回復には時間がかかると思います。

 

コロナによって経済や業界の構造的な変化が起きて元のようには戻らないということがよく言われています。シンガポールも例外なくその影響を受けると思います。但、意外と構造は変わらないのではないかというのが、私見です。人の旅行したいという願望はなくなることなく、時間はかかるものの、航空業や観光業もまた栄えると思っています。また、不動産や製造業もシンガポールの立地・経済・通貨・法秩序の安定性から引き続き残り続けると思っています。

 

なので、いま出遅れているSTIも中長期では「今が買い」ではと思っています。5年我慢する覚悟があれば、日経やS&Pよりも出遅れているSTIが報われるのではないかとみています。

 

*上記はすべて私見であり、自身の考えとリスクで投資してください!

シンガポールの銀行株 ①基礎勉強

マニアックな話でシンガポールのTop3銀行の株について考えます。

シンガポールの銀行 

Top3銀行といえば、DBS、OCBC、UOBです。アジア圏では非常に強い銀行です。ただ、全世界的に見ると規模はそこまで大きくないというのが実際のところです。

 それぞれの生立ちや基本情報をまとめます。

 

DBS 

Development Bank of Singapore;

シンガポール最大手の銀行で元々はシンガポール政府によって1968年に設立されました。今でも、一部は政府(のファンド;Temasek)資本が入っています。銀行業務がメインでプロパティー・コンストラクション向け融資が多いです。シンガポール国内での稼ぎが60%でメインを占めます。

 

ここ最近の業績は下記の通りです。Total Income S$14BでNet Profit S$6Bです。

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DBS

 

 

OCBC

Oversee-Chinese Banking Coporation;

シンガポール第2位の銀行。Banking、Wealth、Insuranceと3つの事業を持っているのが他の2銀行にない特徴です。また、地域もシンガポール50%、中国20%、マレーシア14%と、中国とマレーシアに強みがあり、安定的な保険事業を持っているのが強みです。

 

1932年に3銀行(Chinese commecial Bank, Ho Hong bank, Oversea Chinese Bank)が合併してOCBCとなりました。一部のルーツが中国にあるので中国本土でも事業基盤があるのも一つの特徴です。

 

下記が近年の業績です。NSでS$10.8B, Profit S$4.8Bです。

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OCBC

 

UOB

United Oversea Bank;

第3位銀行。シンガポールメインだが、買収により東南アジア市場へ分散しているのが特徴。シンガポール57%、東南アジア27%、北アジア10%、その他6%。1935年に設立され、香港、マレーシア、中国、インド、インドネシア、日本、フィリピン、豪州、タイ、ベトナム、韓国とほぼ主要なアジアの国へ進出しています。この東南アジア全域をカバーするネットワークを持っているのが強みです。

 

近年の業績は下記です。Income S$10B、Profit S$4Bです。

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UOB

さて、どの銀行がお好きでしょうか。

目標設定;年率何パーセントが妥当ですかね?

コロナ禍の混乱は株式市場では収まり何となく巡行運転が続いている今日この頃の市場ですが、何となく投資していいことは1つもありません。

 

コロナ後に何をゴールに投資するか?を少し考えてみたいと思います。

 

なんぼの目標設定しましょうか?

コロナの有無にかかわらず、投資の最終ゴール設定が大切なのは言うまでもありません。最後は、配当・利回りで儲けるか、売って利益確定しないと儲けにならないのが投資です。バフェットのように「保有期間は一生」という作戦もありますが、資金が限られて山あり谷ありの一般人(私です)にとっては、どこかで売って儲けるイグジットの目標設定しておくことは重要です。

 

では、どれくらいのリターン設定すればいいのか?そんな疑問を悶々と考えたいと思います。 

 

個人的な考えをまず初めに、、、

いきなり独断と偏見で結論ですが、普通の人の投資でいい目標は「10年で年率10%」と思っています。この目標は結構ムズイです。これ以上のリターンを普通の人が狙おうとするとリスクが高まり、若干の博打感が出てきます。

 

ちゃんとしたデータ持っていませんが、成功しているヘッジファンドで年率10-12%ぐらいといわれています。ヘッジファンドの場合、圧倒的な資金をもとに、プロのファンドマネージャーが四六時中、ありとあらゆるマーケットを見て全精力をを注いだ結果です。もちろん、ヘッジファンドは市況の良し悪しに関わらず、「毎年」、年率10%前後稼ぐので、上記であげた「10年間」で年率10%よりも更にハードル高いことは事実です。それでも、プロで年率10%前後なので、普通の人が同じ年率10%とするのはハードルが高いことはお分かりいただけると思います。

 

また、個人型確定拠出年金で選べる350本のDC専用投信において10年間毎月積み立てを継続した時のリターン平均で年率3%超最大で年率7.2です*。つまり、投資信託350本のどのポートフォリオよりもよい投資をしても、まだ年率10%には届きません。いかに「10年で年率10%」のハードルが高いかが分かると思います。

*DC専用投信を徹底調査 リターンは平均年3%超|マネー研究所|NIKKEI STYLE

 

「10年で年率10%」を達成するとどうなるか

 元金1000万円をもっていて年率10%リターンを10年間達成すると、10年後には元金と利息の合計が2000万円を超えます。つまり、10年で倍にするというのが、年率10%の目標値となっています。

 

なお、積立計算(複利税金込み)は下記サイトがすごく便利です。

keisan.casio.jp

 

老後の資金が○○万円必要方式の思考でいくと、、

 金融庁が2019年6月3日に公表した金融審議会の報告書での「2000万円必要」を基準に考えると、、、もし年率10%リターンを10年間達成できると、手元に1000万円ある方は10年後には達成できる計算になります!

 

この報告書が色々と叩かれた(?)感がありますが、目標をもって投資・資産形成しましょうという意味では、一つの指標を示していると思います。この2000万円という数値が妥当なのか、出し方が良かったのか等々はご意見が多々あると思いますが。

 

で、話を戻しますと日本の家計の平均金融資産が世帯平均で1100万円とのこと(詳しくは↓参照)。なので、10%年率リーターンを得られると、10年で平均的な家計は老後に必要な2000万円以上を確保できます。この目標が平均的な家計でおそらく多く(90%以上)の場合、達成されていないと思います。。。primereadingbook.hatenablog.com

 

なぜ年率10%が難しいか、、、

コロナ前から、コロナ後まで一貫して年率10%を1つの目標にしています。で、その経験からなぜ難しいかが分かっています。ズバリ、下記の4つです。

 ①投資先を見つける

 ②資産を分散投資しきる

 ③管理する

 ④売り抜けて、待つ。。

 

インデックス投資で悩まずにポートフォリを組むのであれば①・②はそこまで困難でないです。でも、全資産をしっかり分散で投資しきるのはそこそこ骨の折れることです。なんでもいいから投資というわけにはいきませんので。

 

また、③管理も大変です。基本は買ったらほったらかしですが、年率10%のリターン目標となると、市況に応じてそこそこ細かなメンテナンスが必要です。もっとも難しいメンテナンスが④売り抜け、次買うまで待つです。購入単価から10%以上値上がりした際に売ればいいのですが、、ベストなタイミングや値上がり%の見極めは難しいです。10%の値上がりで売ると年率10%はほぼ達成できません。なぜなら10年間のうちで1年に1度も10%の変動が来ないからです。なので、+15~20%ぐらいのところを狙うか、それともぐっとこらえて+30%~まで値上がりを待つか、見極めるのが必要です。

 

大抵、+15~20%で手放してしまうのですが、もう少し我慢して+30%~50%まで待つべきだと思っています。ここに正解の方程式は発見できていないので、やはり経験でしょうか。本当に大化けする個別株やリートは腹を据えて「売らない」という判断も必要です。

 

最後に、また次の買い時まで待つのも辛抱の難しさです。バブルが弾けるのをじっとこらえて待つ、、、これがつらい。18年初ごろからどこかで株価は落ちると思っていましたが、実際に落ちたのはコロナで20年2Q。この間、2年は本格の買いは無しで待ちでした。

 

結果論ですが、18年初ー20年初はまだまだ買ってもよかったと思う一方で、手を出していた場合、売る抜けられずにコロナでやけど必至でした。でも、コロナの谷をすぐに株価は越えたので、個別株には手を出していてもよかったか??と考えは尽きません。

 

話がずれて長くなりましたが、普通の人には、「10年で年率10%」が達成できるイイとこの目標だと思います。あくまで、素人の目線なので「3年間年率10%」や「5年間、年率20%」なんていうのもあるかと思いますが、、、ちょっと私には夢物語です。。

普通の人の投資の王道 虎の巻34  Win-Win

今回は投資の思想 第3回目で最終回です。

 

1.投資のもともとの意義;「応援すること」/「成長を助けること」

2.投資の資源分配   ;「資源の最適分配」     

3.投資の最終ゴール  ;「Win-Winの関係を築くこと」→今日はココ

 

いきなりのまとめ

「投資」という行為は、根源的には「何かにお金を出して成長させてリターンを得るために行う」行為です。市場全体では、投資によって「リソース(お金)が効率的に分配」 されています。その結果、中長期で効率的に経済を回し、社会発展に貢献しているとになります。これが、(私なりの)普通の人の投資の王道の「思想」でした。そして、このサイクルがも回ることで、投資する普通の投資家がリターンで儲ける「Win」、その投資先の企業・経済・社会が発展する「Win」を同時に達成するWin-Winの状態が最終ゴールと思っています。

 

投資での勝ち負け 

短期で投資をしていると(特に先物取引で)、誰かが勝って(儲けて)、その裏では誰かが負けている(損をしている)という構図が少なからずあります。なので、投資はすべてゼロサムゲーム、或いは、個々人で勝ち負けが必ずあると思いがちです。

 

中長期では必ずしもそうではありません。企業や経済の成長をうまく取り込めれば、参加している人全員が儲けることも理論上は可能です。

 

なので、個別の投資の勝ち負けよりも、全体で成長をいかに取り込んで、中長期でリターンを得られるかという視点を持って投資していくことがやはり大切な考え方になります。

 

他人でなく、自分の中でのリターン基準・目標

投資が一義的にはリターンを得る行為ですので、10年、20年の投資スパンで年率どれくらいリターンを得たいかという目標は大切です。その目標に対して、達成したか、していないかを比べる方が、他と比較した勝ち負けよりもずっと重要です。

 

「億り人になる」や「年率20%達成」みたいな投資術が世の中の記事には踊っていますが、参考にしないでください(笑。いや、何の参考にもなりません。

 

自分の資産形成の目的に合わせて目標値を定めて、それに対してリターンの振り返り、学び(反省)、修正をするようにしましょう。

 

定性的な基準とWin-Win

定量的な目標がリターンですが、定性的な目標が「中長期で社会発展に貢献する投資できたか」です。

 

自分が思った「正しい」という基準で投資先を選んで、その投資が結果として企業、経済、社会が健全に成長/発展する 寄与したかを裏のテーマとして持っていると投資に深みがでてより充実します。この定性基準を自分の中で考えて、少しずつ磨いて持っていると最終的に投資リターンもついてくるように私は考えてます。

 

一見、両立しなさそうな「儲けるコト」と「社会貢献するコト」ですが、実は表裏一体の関係と考えています。正しい商売をちゃんとやっていると中長期的に発展して社会に貢献できるそんなサイクルが世の中にはあると思っています。

 

繰り返しになりますが、普通の投資家がリターンで儲ける「Win」、そしてその投資先の企業、経済、社会が発展する「Win」を同時に達成することが究極の思想であり、ゴールでないかと思っています。

 

「普通の人の投資の王道」締め

長くなりましたが、今回で「普通の人の投資の王道」の思想編も終わりです。これをもって、一旦、「普通の人の投資の王道」を終えたいと思います。横道にそれた回も合わせて、合計34回と長編となってしまいました。もシンガポールの投資とか、リターンの目標設定についても触れたかったのですが、それはまた別で徒然に書きたいと思います。

 

ここまで、読み終えたあなたはもう「普通の人の投資の王道」プロです(素人なのか、プロなのか分かりにずらいですが笑)。普通の人として投資を楽しんでください。では、では。