シンガポールの銀行株 ③比較
前回はシンガポールの三大銀行の株価、パフォーマンスやその評価に関して総括しました。で、その結論として今はDBSが良さそうだが、①そもそもシンガポールの金融業・銀行業がどうなるのか、②なぜDBSが過去負けていたのか(18年以降良くなったか)を考える必要がありそうとなりました。
またまた大分、サボっておりましたが、この2つのうち①テーマ(そもそもシンガポールの金融業・銀行業がどうなるのか)を今回は扱います。
シンガポールの金融業
先に断っておきます。私は金融業界で働いていません。いや、働いたことすらありません。従って、ほぼシンガポールの金融界に対してずぶの素人というレベルですが、知っていること、(投資の為に)学んだことを徒然に書きたいと思います。
シンガポールの金融界。。。響きはいいのですが、実態はよくわからない。そんなイメージを持ちと思います。私も持っています。分かることから行きます。
1.規制が比較的緩やか;様々な金融商品が組成・販売可能
2.税金が安い;企業・投資家が集まりやすい
3.周辺東南アジア国々・中国の企業の資金調達の場
4.立地が良い;アジアのリージョナルHQ
5.世界の名だたる銀行が集まっている
6.商品取引市場(SGX)が充実;先物を含めて豊富に取り揃え
7.通貨が安定している;MAS(Manetary Authority of Singapore)がコントロール
8.インフラ・法規制が安定している;政府(MAS等)ががっちり担保
この結果、金融市場としてニューヨーク、ロンドン、香港に次ぐ第4位の地位をシンガポールは確立しています。そして、(おそらく)シンガポールの野望はアジアNo.1金融センターになること。似たような地位・地理にある香港(と上海)に中長期で勝つことが一つの目標であると思います。
では、シンガポールの金融・銀行業界どうなるか?
コロナによって人・モノの流れが分断されましたので、シンガポールの持つAPACの「ヘソ」という立地の良さは優位性が少し薄れてきていると思います。ただし、カネの流れという意味では、上記であげたインフラ・法規制・通貨の安定性やメリットが今後も存分に発揮されて、アジアの金融センターとしての地位は揺るがないと思います。
また、中国という後背地をもつ香港と上海もそう簡単には崩れないと思いますが、常に中国の政治動向や米国の圧力に脅かされるリスクを持っています。その意味では中国共産党の政治色がないシンガポールは中国企業にとっても有難い資金調達の場であり続けると予測しています。
更に、シンガポールの金融の発展は周辺の東南アジア諸国に大きく左右されます。インド、インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナム、ミャンマーとこれらの国と企業が発展し、海外市場に出ていく際に(自国の金融市場が必ずしも発展していないので)シンガポールで資金調達をします。アジア企業にとってシンガポールは橋頭堡です。一般的にこれらのアジア諸国が今後30年は経済成長していことは間違いないのでこの点もシンガポールにはプラスです。
そして、最後にデジタル化がカギを握ります。Fintechに代表される新興Tech企業による金融業進出が今後も加速していくと予想されています。その意味では、シンガポールは政府が音頭を取り、Tech企業に金融業ラインセンスを与える新たな取り組みを先んじて開始しています。Fintechにおいても政府がある程度の基盤・インフラを整えて「ルールが守られるうえでの自由な競争・発展」を他国より先に促しているのです。これらの取り組みは伝統的な金融業が根強い欧州よりも先行しているように思います。
まとめると
1.既存の安定した金融インフラ・市場は安泰
2.中国含むアジア諸国の資金調達の場としてもまだ栄える
3.Fintechといった新興勢力も取り込むべく先手を打っている
ということで、これからもシンガポールの金融市場は安定して発展していくと思います。
ただ、金融の中でも銀行業に絞るとどうなるか。。という視点はあります。伝統的な一般の預金者からお金を集めて、企業に貸して利ザヤで儲けるというビジネスモデルは恐らく少しずつ衰退していくと思います。また、シンガポールの銀行は不動産開発へ貸し出し・投資している割合も比較的高いと思います。なので、コロナでシンガポールの価値である立地が地盤地下していくと、銀行も少なからず影響を受けていきます。
DBS,OCBC,UOBと銀行+アルファでそれぞれ違った業態、方向性、強みを持っているという点が銀行間での将来の差になってくると思います。次回はこの銀行間の違いをもとにDBSの将来性を考えてみたいと思います。